部員の生活にも張り合い食材はすべて地域の善意

みんな集え!「子ども食堂」

JA高知県女性部南国市地区大篠支部

高知新聞朝刊 2019年12月22日掲載

子ども
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全国的にも取り組みが広がっている「子ども食堂」。食事の提供を通じて「子どもや保護者の新たな居場所」となることで、「保護者の孤立感や負担を軽減する場」「地域で子どもたちを見守る場」として期待されている。2018年5月にスタートし、JA女性部運営の子ども食堂としては全国初の事例となった、JA高知県女性部南国市地区大篠支部の「大篠子ども食堂」を取材した。

女性部のスキル結集

毎月第2土曜日、南国市大そね甲のJA高知県土長地区大篠支所2階の大会議室に「大篠子ども食堂」がオープンする。キャッチフレーズは「ワイワイ楽しく、みんなでごはんを食べよう!」。子どもに限定せず、地域内外の老若男女誰もが利用できることから、開店前から大勢の人でにぎわう。

きっかけは、女性部員の雑談の中で「夏休み明けになると、子どもたちが痩せている」という話題が出たことだった。

県内でも子ども食堂の取り組みが聞かれるようになっており「大篠にもあったらいいのに」という声に続いて、「女性部がやったちかまんやん」という声が上がった。

まずは、女性部員全員に声を掛け、協力者を募集。その中には、地域をよく知る民生委員や栄養士のほか、農家レストランの調理経験がある人もいた。同時に、同支所と連携し高知市の子ども食堂を視察。食器や調理器具をそろえ、女性部の役員全員が食品衛生責任者の資格を取得するなど準備を進め、昨年5月のスタートにこぎ着けた。

 

「大篠子ども食堂」開店に向け地元食材を調理する女性部員ら(写真はいずれも南国市のJA高知県土長地区大篠支所)

 

野菜たっぷり

12月14日の開催で20回目を迎えた「大篠子ども食堂」は、オープン当初150人ほどだった来店者が、今では約200人に増えた。料金は、大人300円、中高生100円、小学生以下は無料。この価格は、女性たちのボランティアと食材の寄付によって成り立っている。

食材は、JAの出資法人である「南国スタイル」から季節の野菜が届くほか、地域の鶏卵業者2社から約300個の卵、近くの量販店から食品や調味料が寄付される。肉や米も精肉業者や個人から提供があり、女性部員たちの畑からも取れたて野菜が届く。

JAは同支所2階の会議室・調理室を会場として提供し、水道・光熱費を負担することで協力している。

女性部員らは善意で寄せられる食材を「すべてお客さんのおなかに収まるように」と、心を尽くして調理している。サラダ、煮物、炒め物、揚げ物、果物、みそ汁などメニューは毎回20種以上に及び、バイキングスタイルで「好きなものを好きなだけ、おなかいっぱい」食べられるシステム。人気は肉料理で、定番の「鶏胸肉のフライ」は早々に売り切れとなる。

ご飯は毎回8~9升を炊き、手軽に食べられるようワカメやゆかりをまぜておにぎりに。「地元の米を食べて元気に育ってほしい」という農家の思いを受けて、あえて手間をかけている。

 

食堂には笑顔が溢れる

 

安心できる居場所

利用者は、子ども同士のグループ、親子連れ、1人暮らしの高齢者、女性グループなどさまざまで、和やかな食事風景があちこちで見られる。

子どもたちからは「子ども同士で来られるからうれしい」「おしゃべりしながら食べるのが楽しい」という声が聞かれ、ある男性は「1人暮らしなのでどうしても野菜が不足しがち。ここには野菜を食べに来ています」と話した。

娘と一緒に来たという高齢女性は、「普段はようけ食べれんけど、ここに来たら食べれる」と、空の皿を指してにっこりとほほ笑んだ。

窪田理佳支部長(54)は「(もともとは)貧困家庭の子どもたちの食を支えたいという思いで始まりましたが、誰でも来られるみんなの食堂にすることで、安心して楽しくご飯が食べられる場所になっていると思います」と話す。

 

やりがいと楽しみに

子ども食堂の活動により、女性部のつながりが深まり「食堂のおばちゃん」と話し掛けられることもあって、日々の暮らしにも張り合いが出るようになったそうだ。

94人の部員のうち、運営に関わるのは18人だが「子どもたちの笑顔のために」というのは全部員共通の思いだ。「地域のつながりができればなおうれしい」と、知人や友達を誘ってやって来る部員もいるという。

子ども食堂が始まって、来店したのは延べ3400人。客席数や食材の量を考えると、1回で200人程度なら受け入れ可能な状況だそうだが、窪田支部長は「地域の『ほっとする場所』がつくれたこと、『また来るね』と言ってくれることがうれしいです」と話す。

次回開催は年明けの1月11日。「子どもたちが喜ぶお正月らしいメニューを考えているところです」と笑顔がほころんだ。